貧者の一灯ブログ

マイペースで自己満足のブログを投稿しています。

貧者の一灯・番外編



















歌が好きだったので、「うたごえ」の歌を
先頭で歌った。


「寝たきり老人をなくす」から「平等な社
会を」「変革を」とエスカレートした。


そうしてまた恋に落ちた。共産党事務所
で出会ったKさん、まばゆい光を放ってい
た。一目ぼれ。


恋心を打ち明けられず事務所に行けば彼
に会えると思った私は躊躇なく学生党員
になった。


共産党員として色々な活動もした(結局
離党したが)。


だが、そんな私を両親は許さなかった。


帰宅した私に親は「お前はアカか」と言い
放った。家を出ていけと言われた。


「アカ」っていつの時代だ?小林多喜二か? 
小樽の代表作家じゃないか。そういえば、


『蟹工船』(小林多喜二、文芸誌「戦旗」
が、ブーム再来していたっけ。


理不尽だ。信念は曲げられない。家出を決行
した。 事情を理解してくれた友人宅にバック
一つで転がり込んだ。


その彼女は党員ではなかったが、彼女のご
両親が私の事情を理解し、なんと家出を支
援してくれた。


一か月間友人宅に居候。


友人のご両親の手前もあり両親は折れた。
私を解放してくれた。実習も近かったから、
いずれは家から出なければならなかったの
もある。


幸い、やはり遠くから通学していた友人と共
同生活を始めることで、親元を離れることが
許可された。





親から解放された自由を満喫。


ボランティア、学生運動、そして恋愛の
日々。大学時代は人生最大のモテ期だった。


毎週違う男の子とデートした。あんなに
高校生の時に悩んだ男女の「一線」もひと
夏の経験で簡単に越えてしまった。


夜はススキノ通い。当時ディスコと呼ばれ
た場(今はクラブか)の店員でかつてディ
スコキングだった(なんじゃ、それ?)と
いう男にはまった。


この恋は、完全お互い遊びだったが、結果、
火遊びになってしまった。


遊びで妊娠。全身の血が引くのを感じた。


気が動転した。 産むなんてありえない。し
かも妊娠が判った時はとっくに別れていて
連絡の取りようもなかった。


人工妊娠中絶しか選択できなかった。誰に
も内緒でこっそり中絶。ただ悲しかった、
つらかった。


共同生活をしていた彼女だけが手術後ずっ
と泣きながら手を握っていてくれた。


つらい思いをさせてごめんね。でも、その
罰はやはり下された。


戴帽式の日に腰椎手術・長期入院 私は、
中絶した後、気を紛らわすように病院の
看護助手のアルバイトをした。


働いていると気がまぎれた。患者さんの
笑顔が嬉しかった。誰かの役に立ててい
る実感がわいた。


けれど、看護技術も形しかできていない
実習前の学生だ。車椅子を使用するリハ
ビリ患者の移動を、一日に何度も手伝っ
て腰を痛めた。


実は、小学五年から腰痛持ちでコルセット
着用の日々だった。腰痛はいつものことだ
ったから気にしていなかった。


しかし、突然、足がしびれて動けなくな
った。腰部椎間板ヘルニア。神経麻痺が起
きて完全に歩けなくなっていた。


実習どころではなく入院安静。そして、五
月十二日、ナイチンゲール生誕祭、看護帽
をいただくはずだった戴帽式のその日、私
は腰の手術を受けた。


これで看護師の道は断たれたと思った。
これは神様の罰だ、きっと。





そんな私のところに、党員事務所で会ったK
さんがお見舞いに来てくれた。


あまりの嬉しさに何もかも忘れそうなくらい
ドキドキした。


ひょんなことから、初対面に近いKさんに、
私は両親との確執、中絶のこと、腰椎手術で
留年して看護を諦めるよう言われたことを
打ち明け泣いてしまった。


Kさんはそれから毎日私を見舞うようになった。
親さえも面会に来ない病室に、Kさんは毎日来
てくれた。


きっと私が自殺を図ると心配したのだろう。


「明日も来るからな」、 学校の先生みたいに
言って帰って行く。


そうして入院していた三か月間、本当に一日
も欠かさず来た。


点滴をしていない手にパペットをはめてくれ
たり、本を読んでくれたり、泣きそうになる
と手を握ってくれた(子ども扱い)。


温かくて大きな手。リハビリが許可されると
公園に連れて行ってくれた。お兄ちゃんみた
いだった。


私は勝手に恋心を抱いていたけれど、Kさんは
捨てられた犬を世話しているようなぶっきら
ぼうな優しさだった。


たまに 「元気になってきたようだから明日は
来ないぞ」 って、


てっきり来ないと思い、リハビリ散歩という
口実で隣の病室のおじさんとパチンコに行っ
て帰ってくると置手紙がある。


「来たけど、いないようだったから帰る」と。


もう来てくれなかったらどうしよう。その頃、
Kさんは超貧乏学生で間借りの下宿、電話など
なく、連絡のしようがなかった。


けれど次の日も来てくれた。退院してもしば
らく彼は私の様子を見に来た。


でも、すっかり元気になってきたことを確認
すると「もう大丈夫だね」、と言って去ろう
とした。


「待って、行かないで、好きなの、傍にいて
ほしいの」 告白して必死にしがみついた。


そして男女の関係になってずっと一緒にいた。
※…









自分の仕事のスタイルや働く時間や場所を
自由にしたいと選択する若者の受け皿とな
っているのが、飲食宅配大手のウーバーイ
ーツなどに代表される、インターネットを
通じて単発の仕事を請け負うギグワークだ。



国が昨年実施した「フリーランス実態調査」
によれば、その約3割を30代までの若者が占
める。



好きな時間に好きなだけ働けるメリットが
ある一方、雇用は不安定で、所得も低いと
いう人が少なくない。



さらに労働法規でまったく守られないと
いう、大きな落とし穴が待ち構えている。





「突然に掲載停止されるまでは、ほぼすべて
の仕事はここに依存していました。


仕事をさらに増やすために、新しいトラック
を購入したり、倉庫も借りたりしたばかりだ
ったので、ものすごいショックでした」


引っ越し業を営む都内在住の男性(31)は当
時を振り返り、そう憤る。


男性は大学卒業後に就職し、主に法人営業を
行っていた。ただ営業マンだったころから、
会社が休みの土日は、引っ越しなど便利屋業
務を行っていた。


「もともと東京郊外の街で育ち、学生時代か
ら地元愛が強くて、お酒を一杯奢ってもらっ
たお礼で引っ越しを手伝うような性分でした。


職人として生きていきたい気質は、企業に
就職した後も続きました」


20代後半で退職し、不用品回収のノウハウを
取得するために、自治体のごみ収集業で働い
たりもしていた。


そんな男性が、このデジタル・プラットフォ
ームと出会ったのはそのころのことだ。


「たまたま知人から、ここは仕事の量が豊富
なので仕事を覚えるためにとりあえず登録し
てみなよと勧められて気軽に始めたら、すっ
かりのめり込んでしまいました」





このプラットフォームはネット上で、引っ越
しや家事代行などのサービス提供者と利用者
をマッチングするものだ。


提供希望者は氏名やメールアドレス、電話番
号などを入力し、登録を申し込む。


依頼が入り稼働すると、契約金額の2割を手数
料としてプラットフォーム側が徴収する。


男性は2019年6月に登録し、審査が完了する
と、プラットフォーム上に個別ページが掲載
された。


「最初からはまりました。ひっきりなしに仕
事の依頼がきて、極力断らずに受けていたら、
口コミでも高く評価されて、さらに仕事が続
く好循環でした」


口コミは利用者によって5点満点で評価され
るもので、高い点数の口コミが増えると、
プラットフォーム上でのランキングも上が
る仕組みだ。


ランキングが上がるとそれを参考にした新規
の顧客がつくため、仕事を受け続けるにはこ
れの上昇が欠かせない。


「ちょっと頑張れば、仕事を始めたばかりの
自分でもランキングがどんどん上がる。自分
がやり手の職人のように思えてきて、ゲーム
のようにのめり込んで行きました」


プラットフォーム会社の「コンサルタント」
と呼ばれる担当者からも、「どんどん売り上
げを伸ばしていきましょう」とアドバイスを
受けて、さらに多量の引っ越し業務をこなす
ために新車のトラックを購入し、貸倉庫の契
約も行った。


一方、そこで最も避けなければならないのが、
利用者から低評価を付けられることだ。


引っ越し作業では、実際現場で追加の仕事が
生じることも多いが、低評価を恐れて料金の
上乗せを躊躇する業者がほとんどだという。


「本来、顧客と業者は対等だと思っています
が、実際にこうした仕組みでは顧客からの理
不尽な値下げ要求などでも飲み込まざるをえ
ませんでした。


ランキングには口コミだけでなく、このプ
ラットフォームでの稼働実績も求められる
ので、条件の悪い仕事でも引き受けていま
した」


そうした疑問を感じながらも、男性は1年近
く、ほぼこのプラットフォーム専業で働き、
月の手取りで平均30万円ほど稼いでいた。


そんな中、やはりこれはおかしいと感じる出
来事があった。


「同業者の中高年の夫婦から、5階建てのマ
ンションの引っ越し作業で2人がかりで一日
かかったのに、手取りは1.5万円と聞いて驚
きました。


彼らは『それでもコンビニで働くよりはも
らえるから』と言ってましたが、さすがに
こんな低料金が横行してはまずいだろうと」





意を決した男性は2020年5月、ツイッター上
にプラットフォームの実名を出し、こんな投
稿を行った。


「当方は、毎月10万円~20万円の『みかじめ
料』を払っています。いい面もありますが、
事実上の下請け業者になっている側面もあり、
この点は強く問題視しています。


仲介屋さんに依存せず、自力でお仕事を取っ
ている同業者のみなさんを尊敬します」


投稿のすぐ翌日に、プラットフォーム会社の
従業員から、「そういう投稿をされるととて
も悲しい」と電話で告げられ、ツイートの削
除を要求された。


男性はそれを受け入れ、関連投稿も含めすべ
て削除した。


ところがその数日後、プラットフォーム会社
から男性に、「出店の継続について審議する
べく掲載停止にする」とのメールが届き、一
方的に男性の個別ページの掲載が停止された。


その後、審議の結果はいつわかるのかなど、
何度も連絡を取ろうとしたが、プラットフォ
ーム会社からの返信はいっさいなかった。


「停止されて収入が途絶えたのは、ちょうど
新型コロナウイルス蔓延の第一波の時で、血
も涙もないと痛感しました。


職人の世界では、たとえ元請け、下請けの関
係であっても両者には一定の緊張関係があり
ます。


でもこうしたプラットフォーム会社には、自
らが一方的に支配できる上下の関係しかあり
えないのでしょう」


この男性のように個人事業主、フリーランス
などと呼ばれ、請負や委託の契約による「個
人請負」で働く人は近年急増しており、全就
業者の5%~7%にあたると言われている。


その業種は多種多様だが、上記のようなイン
ターネットのプラットフォームを介してやり
取りされる単発仕事の「ギグワーク」はその
典型だ。


コロナ禍の中で目下活況を呈している「ウー
バーイーツ」はギグワークの代表例といえる。


単発の仕事といっても、上記の男性のように
ほぼ1社専属で働いている人も少なくないが、
個人事業主という建付け上、労働基準法など
の労働法規はいっさい適用されない。


男性が労基法の適用される労働者だったら、
仮に上記のようなツイートを理由に解雇され
ても、裁判上で争えば解雇権の濫用と認定さ
れるだろうが、個人請負だとそうした保護も
ない。


保護がないばかりか、男性はランキングを
上げるために、プラットフォーム会社が行
うセミナーにお金を払って参加していた。


個人請負からセミナーや研修と称して、金銭
を徴収する業界はほかにもある。





「お金を払った者にだけ仕事を与える制度
はおかしいと声を上げたら、担当クラスを
打ち切られました」 大手のヨガスタジオで
インストラクターとして働く女性はそう話す。


同社で働くインストラクターの多くは個人請
負だが、ある時から彼女らに対しても同社の
有料講習制度や有料認定制度を強制するよう
になった。


「従来どおりの仕事を続けたかったら、会社
にお金を払ってね、ということです」(女性)


これに反発したインストラクターたちは、契
約上では個人請負だが、実態は一年契約を継
続的に更新し、時間や場所、マニュアル等で
の指揮命令も受けており労働者に当たるとして、
労組を結成し団体交渉を行ってきた。


そんな中、コロナ禍を理由として、複数の労
組役員のクラスが一方的に打ち切られた。


「個人請負だから金銭を徴収される一方で、
補償もされずに仕事を切られるような理不尽
が許されるのでしょうか」(女性)


さらには、個人請負に対して約束した仕事を
与えないばかりか、多額の違約金を請求する
ような会社すらある。


「コロナ禍での収入減を補うためアルバイト
を探したところ、『日収2万円以上、月収40
万円以上可』という求人広告に目を引かれ
ました」


タクシー運転手の男性はそう経験を話す。


勤務明けや休日にできるアルバイトで、かつ
上記のような好待遇をうたっていたのが、あ
るバイク便会社の個人請負のバイクライダー
だった。





だが、面接を経て仕事を始めてみると、実態
はまるで違っていた。


1日をその仕事にあてても、配送は1~2件程度
しかなく、「ひと月で12日間、朝から晩まで
働いても収入は2万円台、


日収2万円どころか月収2万円というのが現実
でした」(男性)。


とても割に合わず会社に仕事を辞めると申し
出ると、なんと解約には3カ月前の申告が必要
で、今すぐやめるには計60万円の「違約金」
を支払うよう求められた。


「労働というよりもはや搾取。個人請負を隠
れ蓑にした悪質な雇用詐欺以外の何物でもあ
りません」(男性)


こうしたギグワークで働く人からの相談を受
けている労組、「プレカリアートユニオン」
の清水直子委員長は、「個人請負を悪用する
企業は、人に雇われるよりも、自らが事業主
になったほうが安心などと、巧みにたきつける。


会社に対等なビジネスパートナーなどとおだ
てられ、結局働く側が搾取されるだけのケース
が横行している」と警鐘を鳴らす。


個人請負は政府が働き方改革で掲げる「柔軟な
働き方」の1つとして喧伝される。


だが、同じ業務を行う労働者よりも、はるか
に多くの落とし穴が待ち受ける危険は重々用
心することが欠かせない。…