貧者の一灯ブログ

マイペースで自己満足のブログを投稿しています。

貧者の一灯・歴史への訪問















※…
お母さんは、どういう訳か姉のお千代が大嫌いで、
いつも妹のお花ばかりを可愛がっていたのです。  


ある冬の寒い日の事、お花がこんな事を言いまし
た。 「お母さん。お花、イチゴが食べたい」  


するとお母さんは、お千代に言いつけました。


「お千代、お花の為に、いますぐイチゴを摘んで
おいで」 でもイチゴは夏の果物なので、こんな
寒い冬にあるはずがありません。  


そこで、お千代は、 「しかし、お母さま。冬に
イチゴなんて」 と、言ったのですが、 「つべこ
べ言うんじゃないよ! 可愛いお花がイチゴが食
べたいと言うんだから、お前はイチゴを摘んでく
ればいいんだよ! 


ほれ、弁当におにぎりをやるから、はやく行くん
だよ!」 と、お母さんはお千代を家から追い出
してしまいました。  


さて、お千代は仕方なく雪の降る山へと行った
のですが、どこにもイチゴなんてありません。


「どうしよう。でも、このままでは帰れないし・
・・」  


困ったお千代が雪の上で途方に暮れていると、
近くの山小屋に住むおじいさんが、お千代を
自分の山小屋に招いて言いました。


「どうした。こんな雪の山に、たった一人で何
をしにきたんじゃ?」


「はい、お母さまに、イチゴを摘んでこいと言
われたので」


「そうか。イチゴをのう。それより、寒いだろう。
遠慮せずに火にあたれ」


「はい。ありがとうございます」 お千代は火
にあたりながら、おじいさんに尋ねました。


「おじいさん、お弁当を食べてもいい?」
「ああ、いいとも、いいとも」  


お千代が弁当の包みを広げると、そこには米が
一粒も入っていない、小さなヒエのおにぎりが
一つ入っていただけです。  


それを見たおじいさんは、お千代に尋ねました。


「すまんが、わしにも、ちょっと分けてはくれ
んか?」


「うん。これでよかったら、みんなあげる」


「そうか。お前はいい子だな。・・・そうそう、
イチゴを摘みに来たのなら、小屋の前の雪の消
えたところへ探してみるといいぞ」  


そこでお千代が小屋を出てみると、雪の消えた
ところにまっ赤なイチゴがたくさんあったのです。


喜んだお千代は、カゴいっぱいにイチゴを摘ん
で家へ帰りました。  


すると、イチゴを摘んでこいと言ったお母さん
がびっくりして、お千代に尋ねました。


「お千代、お前、この寒い冬のどこにイチゴが
あったんだい?」  


そこでお千代は、お母さんとお花に、山小屋で
の出来事を話してきかせました。  


するとお花が、 「明日は、お花がイチゴを摘み
に行く」 と、言い出したのです。  


そして次の日、お花は、お母さんが用意してく
れたお弁当とカゴを持って、お千代に教えても
らった山小屋のおじいさんのところへ行きました。


「おじいさん。わたし、イチゴを摘みに来ました」


「そうか、イチゴをのう。それより、寒いだろう。
遠慮せずに火にあたれ」  


お花は火のそばに行くと、何も言わずに弁当を
広げました。  


お弁当は、お千代の時と違って、美味しそうな
白米のおにぎりが二つ入っていました。  


それを見たおじいさんは、お花に尋ねました。
「すまんが、わしにも、ちょっと分けてはくれ
んか?」  


しかしお花は、 「いやや、これはお花のだから、
おじいさんにはやれん」 と、おじいさんの目の
前で、二つのおにぎりを美味しそうに食べてし
まったのです。  


がっかりしたおじいさんは、お花に言いました。


「お前、イチゴを摘みにきたのなら、小屋の前
の雪の消えたところへ行ってみな」  


そこでお花が小屋を出てみると、雪の消えたと
ころにまっ赤なイチゴがたくさんあったのです。


お花はそのイチゴをかごいっぱいに摘むと、喜
んで家へ帰りました。


「お母さん、ただいま。イチゴをたくさん摘ん
できたよ。ほら」  


お花がそう言ってカゴを開けてみると、中には
イチゴではなくて、ヘビやカエルやムカデがい
っぱい入っていたそうです。。…










※…
会社に入って3年目に、マンツーマンで一人の
新人の教育を担当する事になりました。


実際に会ってみると覚えが悪く、何で俺がこの
子を担当するんだろうと感じました。


しかし仕事ですから、現場で教えて行きました
が怒鳴る事多々。半年が過ぎようとした時に彼
は元気がなくなり、会社を休むようになりました。


休むようになって2週間後に、この子の両親から
小生と当時の部長へ会って話したい連絡があり
ました。


小生が怒鳴る事が多々だったので、その子に精神
的ダメージがあり両親が訴えているのかと思いま
したが、その子の両親から、その子が癌が発見さ
れ余命2年は持たないとの報告がありました。


両親は体調を見ながら癌だからと小生の指導の手
を抜かないでと哀願されました。


一人前の社会人として旅立って欲しいとの事でした。




彼の一時復帰後に、小生は必死に色々なことを教
えました。 しかし、先が短いから色々な事を覚え
て欲しくて強く対応してしまいました。


いつも会社が終わった後、居酒屋で強く当たり過
ぎたんじゃないかと、酒を飲みながら泣いていま
した。


そしたら、たまたま同じ部署の女の子が泣きなが
ら飲んでいる小生を見つけて、声をかけてきました。


以前女子会で、その居酒屋で小生を見たそうです。
訳を話してしまいました。


だから辛いから酒を飲んでいるんだと。


すると彼女は怒鳴り始めました。 「社会では、
辛い事を一杯抱えてている人がいる。酒を飲ん
で解決するなら皆べろべろになるまで飲んでる。


それに、あなたは明日から二日酔いに近い状態で、
あの子に指導するの!」


目が覚めました。もっと心身とも万全であの子
に指導しようと決めました。



※ しかし、若いから癌は進行します。


彼は3ヶ月を過ぎた頃に体調が悪くなり入院しま
した。 見舞いに行くと彼はベットから、 「復
帰したら、また色々と教えてください」


小生は両親からのお願いを思い出し、 「あ~、
もちろんビシビシいくよ」 と言って病院を去り
ました。



※ その後、約10日後に彼はこの世を去りました。


お通夜に彼の両親から一冊のノートを手渡され
ました。


小生が彼に教えた事をノートにまとめていたの
です。 最後に入院した際にも元気な時はノート
をまとめていたそうです。


涙が出てきました。 でも小生は、そのノートを
受け取る事ができませんでした。


彼の両親に、彼の得たノウハウは彼が行った天国
に持って行ってくださいとお願いしました。


ノートは棺に入れて火葬されました。
一冊のノート。今でも忘れられません。…